最高裁判所第一小法廷 昭和24年(オ)245号 判決 1953年12月17日
弘前市大字富田新町五二番地
上告人
福士タキ
右訴訟代理人弁護士
竹田藤吉
東京都豊島区駒込三丁目四〇六番地
被上告人
川口昇次郎
右当事者間の後見開始届出の記載抹消請求事件について、仙台高等裁判所秋田支部が昭和二四年九月二日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があり、被上告人は上告棄却の判決を求めた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
本件記録によると被後見人本人である川口義和は、昭和七年七月二八日生れであるから、今日ではすでに成年者であり、従つて被後見人として被上告人の後見に服してはいない状態にある。それ故、所論のごとく被上告人を前記川口義和の後見人に選任した親族会決議の不成立を理由として、後見人でないことの確認を求める訴は、その利益なきに至つたものである。(所論の事由は親族会決議の無効事由とは認め難く、単に取消事由に過ぎないのであるが、該決議取消の訴は法定の一箇月内に提起されたことは認められない。)されば、上告理由につき判断するまでもなく、本件上告は結局棄却せらるるを相当とする。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官の一致で主文のとおり判決する。(裁判官沢田竹治郎は退官につき合議に関与しない。)
(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)
昭和二四年(オ)第二四五号
上告人 福士タキ
被上告人 川口昇次郎
上告代理人竹田藤吉の上告理由
原判決は本訴を以て所謂固有の意義に於ける必要的共同訴訟であつて従つて被後見人をも共に被告として相手取らなかつたのは不適法であるとし、上告人の訴を却下したけれども右は法律の観釈を誤つた違法があり破毀を免れないものと信ずる。
蓋し被上告人が訴外未成年者川口義和の後見人でないことの確認を求める訴は、被後見人川口義和に於て原告たる上告人の主張を争うときは之を共同被告とすべく、而して之を共同被告となしたるときは係争権利関係の性質上同一趣旨の判決をしなければ訴訟の目的を達することができないという必要がでて来るのであるが、本訴は被後見人たる川口義和が上告人の主張を争わないから、之を被告として相手取る必要は事実上なかつたばかりでなく、法律上も亦後見人たる身分関係の如く所謂「与えられた関係」でなく「作られた関係」に在つてはその不存在の主張は後見人一人を相手方とするを以て必要且十分であるといわなければならない。
本訴は以上の如く原告がその必要に応じ、後見人被後見人の両名を共同被告として相手取ることもできるが、又その一人を相手取ることもできるという所謂類似必要的共同訴訟であるから、上告人が後見人たる被上告人一人を相手取つて提起したとしても不適法というべきでない。
以上